ヒトデの神秘を科学する

ヒトデの神秘を科学する


科学技術顧問 佐藤謙一 (Kenichi Sato)

ヒトデの不思議な力

 ヒトデは、日本沿岸にごく普通に見られる生き物です。ウニやナマコと同じ棘皮動物と呼ばれています。これまでは、特に有用な利用法もなく、時として大量発生しホタテなど貝類を捕食するため、漁業の邪魔者として扱われていました。しかし、近年の研究から、ヒトデには有用な成分(サポニン、ステロイド、アルカロイド、リン脂質 等)が高濃度含まれていることが明らかになりつつあります。特にヒトデのサポニン類には我々の想像を超えた不思議な作用があるのです。
 ヒトデ・サポニンは、種類が多く構造も複雑と報告されていますが、その薬理作用の詳細は明らかではありません。 例えば、古くから汲み取り便所にヒトデを投げ込んでおくとウジが湧かない、ヒトデを肥料とすると野菜の生育がいいなどが知られていました。最近の研究から、アブラムシなど害虫に対する忌避作用、あるいはヒトの癌細胞破壊作用、ヒト免疫増強作用、コレステロール低下作用、抗ウイルス作用、カビに対する殺菌作用などが報告されるようになり、



ヒトデの神秘を科学する

新たな医薬品の成分として注目されるようになりました。
 さらに、ヒトデは、サポニンの他にも生理活性を示す様々な成分や石灰質性骨板(脱臭作用)が知られています。まさに、ヒトデは海の厄介物から、海からの恵みへと変身しつつあるのです。

 北海道環境バイオセクターは、海洋性廃棄物のヒトデを、独自に開発した無臭技術を駆使して処理し、その産生物から新たな可能性を追求しています。